いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

1/√2 は分母を有理化しないといけないのか

 ぼくたちは中学校で「1/√2」は「1/√2=√2/2」と、分母の有理化をしなければいけない、とたたき込まれています。今でもそうらしいです。生徒に「分母の有理化をしないと気持ちの悪い人、手をあげて」と言うと半分くらいは上がります。でもどうして有理化しなければならないのか知らないようです。要するに理屈抜きに「とにかくこうしないとダメ!」と思い込んでいるわけで、もう刷り込みみたいなものです。アヒルの雛が生まれて初めて見た動くものを親と思い込んで後をついて行く、というアレです。中学校の先生たちは頑張ってくださっているのでしょうが……今や、それほど神経質になる必要もないでしょう。式変形の都合で分母を有理化しないとどうにもならない、ということはありますが(そういう問題がある)、だからと言って「気持ち悪い」ほどたたき込まなくてもいいと思います。

 そもそも、なんで分母を有理化するのでしょうか。大きな理由に「計算しやすい」というのがあると思います。多分中学校でも説明していると思いますが、ぼくも授業で話します。「1/√2」と「√2/2」ではどちらが計算(近似値を求める)しやすいでしょうか。昔は電卓などなかったので筆算でやるしかないですが、そうすると「1÷√2≒1÷1.41421356」は大変です。筆算でやってみると……1の中に1.4142……は1個もないから商として「0.」と書きます。10の中に1.4142……は7個あるので(6個ではない)、商に続けて7を立てます。……とこれを繰り返すのです。これはやりたくない計算でしょう……。でも「√2/2≒1.41421356÷2」なら筆算でも簡単です。順番に、アッという間に0.707……と計算できます。

 分母を有理化してあれば暗算でも大体の値ならすぐ分かるし、小数で値を把握しないとグラフを描いたり値を見積もったりするときにうまくないことがあります。だからもちろん有理化できないとまずいですが、今では電卓も安いしみんなスマホも持っています。つまり、「何が何でも分母の有理化!!!!」みたいに強制する意味がないのです。実際、高校では三角関数の値を「1/√5」と書いてしまいます。ただ、「10/√2」は有理化した方がいいでしょうし、「4/√2」もそうでしょう。ぼくは「正しい値で、十分簡潔に書けていればどっちでもいいよ」と説明します。高校では「何が何でも分母の有理化!!!!」とまで言う先生はいないと思います。いたら……つまらないことを押しつけるのはやめましょう……。他に話さなければならない大事なことがたくさんあるのです。