1900年代初頭に生まれた相対性理論が描く宇宙を、物理学者や天文学者たちがどのように理解してきたのか、概観できます。興味深い、知らなかった話がいくつも書いてありました。
一般相対性理論についてはアインシュタインとヒルベルトの先取権争いがあったそうです。ヒルベルトは大数学者ですし「えっ、ホント?」という感じです。ヒルベルトは変分原理から一般相対性理論を導いたのだそうです。いかにも数学者っぽい気もします。一般相対性理論は10本の微分方程式が複雑に絡み合った構造で、方程式を解くには時空にいくつかの対称性を仮定するなどの必要があります。天文学者のシュバルツシルトは時空が真空で中心だけに星があるような球対称構造で、時間変化しないものを考えました。著者の先生は「この仮定は最も状況を簡単にするもので、アインシュタイン自身が解かなかったのが不思議なくらいである」と書いています。このシュバルツシルトの求めた解が後にブラックホールとして現実になります。アインシュタインはこの解について、仮定が単純すぎて自然界では実現されないと考えたようです。
ぼくは特にアインシュタインが、自分の美意識(物理学的な)に拘りすぎ、いろいろうまくいかなくなったあたり、考えさせられました。啓蒙書ですし、もちろん理論そのものを詳細に解説しているわけではありません。しかし、読めば本当に擦った揉んだ(すったもんだ)しながら物理が発展してきた様子がイメージできます。久しぶりに面白い本に出会えました。