いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

授業が怖くなる

 ある先生が「授業が怖くなった」と言っていました。何のことかと思ったら……教科書に何気なく書いてあることでも、生徒に「どうして?」と突っ込まれたときに自分はちゃんと答えられないことがあるかも、みたいな意味です。確かに高校の教科書では、「~であることが分かっている」といった説明が何気なく書いてあるけれど実際の証明は大変だったりする、そんな例がいくつもあるのです。ぼくはA先生に、半分ふざけて(従って半分真面目に)『ヒカルの碁』(ジャンプ・コミックス)の話をしました。
 濡れ衣を着せられて自殺をした平安時代の天才棋士、藤原佐為(ふじわらのさい)が現代の少年、進藤ヒカルに取り憑き、碁を教えます。佐為は江戸時代には本因坊秀策(実在した天才棋士)に憑いていたということになっており、だから秀策はすごかったのだ、という設定。ヒカルはプロを目指して院生になり(プロ棋士の養成機関に入る)、どんどん強くなるのですが、ある時期、勝てなくなります。佐為と毎日打って強くなっているはずなのに……。佐為はひと言、「私と打っているからです」。ヒカルは強くなり、だんだん敵の刃の切っ先(きっさき)が見えるようになりました。それが怖くなって思い切った手を打てないのだ、と看破したのです。強くなって視野が広がり、深いところまで分かるようになると逆に初めて怖さが分かる。そういうものなんですね。