いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

DVD『シンシナティ・キッド』、『スティング』

 若い天才的なポーカーの勝負師、ミシシッピ川流域一帯で『シンシナティ・キッド』と呼ばれている男が名人位獲得の野心に燃え、30年にわたるタイトル保持者に挑戦します。1930年代のアメリカが舞台の映画です。アメリカの古い映画にはこんな感じのが結構あります。『ハスラー』というのもありました(ビリヤードの物語です)。若者が歳をとったチャンピオンに戦いを挑む。面白いテーマなんですね。『シンシナティ・キッド』ではスタッドポーカーというのが出てきます。ポーカーにはいくつか種類がありますが、スタッドポーカーというのは配られるカードの一部をお互いに見せるというルールです。「このカードを相手が見ればこちらの手は××だと思うだろう」とか、「ハッタリでよさそうな手に見せよう」など、心理戦、頭脳戦といった要素が勝負の大事な部分を占めます。映画ではルールの説明などはありませんが、知識がなくても楽しめます。古い映画ですからCGなんかはもちろんないですし、今となっては古い表現方法などもあったりします。でもそれがまたいい感じです。最後もすごかった!

 もうひとつ、『スティング』を。1936年。シカゴの下町で、詐欺師の3人組が通りかかった男をひっかけ、金をだまし取ります。しかしその金はニューヨークの大物、ロネガンのものでした。怒ったロネガンは詐欺師の1人であるルーサーを殺します。仲間を殺されたフッカーはロネガンに仕返しすることを考えます。フッカーは伝説の詐欺師、ゴンドーフに協力を頼み、2人で大がかりな詐欺を計画します。ロネガンから大金を巻き上げようというのです。フッカーは徐々にロネガンを信頼させ、最後には競馬を使った大きな計画で見事ロネガンをひっかけます。彼らは同時に読者もきれいにひっかけてくれます。最後のどんでん返しには言葉を失いました。マジック好きなぼくとしては、ゴンドーフがロネガンを相手にやった、列車の中でのポーカーのイカサマも大変おもしろかったです。こんなのを、コンゲーム小説と言います。暴力には訴えず、知恵を使って仕返しなどのために相手をひっかける。そして一緒に読者もうまくだましてくれる(ここが重要!)。そういう小説です。ぼくはこの『スティング』をDVDで見ました。全編に流れる雰囲気も、使われている音楽(スコット・ジョプリンラグタイム)も最高で、古い時代のアメリカを感じさせてくれます(ちょっと違うけれどディズニーランドのワールドバザールみたいな)。

 CGももちろんなし、映像の技術も音の技術も昔のもの。だけれどどちらもすごい映画です。