いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

ガロア理論を解説した分かりやすい本

 『親切な代数学演習―整数・群・環・体』(加藤明史2002現代数学社)を紹介しましょう。

 代数学をちゃんと勉強すれば「5次以上の代数方程式には解の公式がない」という定理が証明できるようになります。この本は大学の理系で数学を1年も勉強した後ならある程度読めると思います。自分で考えて行間を埋めなければならないところも結構ありましたが、考えれば分かるという感じで、元気な人にはお勧めです。本気で読めばさっきのガロア理論の「5次以上の方程式には解の公式がない」辺りまでをモノにできます。最近は分かりやすい本もいくつか出ていますが、ぼくの中ではこれがある意味一番です。amazonのレビューでは「簡単な整数の約数や倍数の話から、巨大な理論が構築されるのに感動した」とあります。まさにそういう感じ。「5次以上の方程式には解の公式がない」、主張自体はこんなに分かりやすい具体的な問題なのに、それを解くためにどんどん抽象的な概念が出てきて、最後にきれいに解けてしまう。そういう不思議さ、楽しさをたっぷり味わえる本です。

親切な代数学演習―整数・群・環・体

親切な代数学演習―整数・群・環・体

 

   『ガロアに出会う はじめてのガロア理論』(のんびり数学研究会(松本幸夫、大木秀一、小田正美、酒井健、渋谷司、松谷吉員)2014数学書房)もよかったです。「できれば高校生にも読める本にすることを目指した『ガロア理論』を解説した入門書。集合や群などの基礎事項もはじめから解説」だそうです。うーん、よほどできる高校生なら分かりませんが、ちょっと厳しい気がします。それでも最短距離で「5次以上の……」にたどり着けると言ってよいと思います。説明は分かりやすかったです。

ガロアに出会う: はじめてのガロア理論

ガロアに出会う: はじめてのガロア理論

 

個人的には『親切な代数学演習』の方が周辺のいろいろな事情を説明してくれていて面白かったと思います。