この著者の本を読むのは3冊目です。これは短編集。短編が5つ、「おまけ」がひとつ入っています。
『風ヶ丘五十円玉祭りの謎』では、いつもの高校生メンバーが風ヶ丘高校の地元の祭りの謎を解きます。祭りで出店がなぜかおつりを50円玉でよこします。200円のおつりを50円玉4枚で、とか。楽しい話です。『もう一色選べる丼』は高校の学食の近くでトレイに乗った食べ残しの丼が見つかり、誰がこんなことをしたのか考える、という話です。主人公はわずかな手がかりからその裏で起こっていることを推理します。『九マイルは遠すぎる』(ハリイ・ケメルマン1976ハヤカワ・ミステリ文庫)は、たまたまチラッと聞いた「9マイルもの道を歩くのは容易じゃない。まして雨の中となるとなおさらだ」という会話の断片からその裏にある事件の真相を論理的に明らかにする、という短編ですが、この『もう一色選べる丼』はそれに通じる印象です。
こういった話を読んでいると自分でも同じように推理することができそうな気がしてきますが、無理なんでしょう……。さらにこういう話なら自分でも書けるかも……という気もしてきますが、これも無理なんでしょう……。
登場人物がいつものメンバーだと、それだけで安心感があります。余分なことに気をつかわないでいい、という感じ。ホームズにしてもポワロにしても、そういう作りになっていますよね。と言うか、決まった主人公が毎回活躍する、という構成はそもそもホームズから始まったのだとか。