いぬおさんのおもしろ数学実験室

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生徒の対話が大事! ……って本当なのか? フィンランドの例も

 フィンランドPISAの成績は2000年度くらいがピークで、それ以降落ちているのだそうです。PISAとは……OECD経済協力開発機構)が実施する国際的な学習到達度調査で、15歳児を対象に読解力、数学的リテラシー、科学的リテラシーの3分野について3年ごとに調査が行われます。単に知識を測るだけでなく、身につけた知識を実生活でどのように活用できるかを評価する点が特徴です(Wikipediaより)。
 フィンランドでは、成績がピークであった頃のPISAを受けた生徒が小学生中学生だった頃は、教師主導型から新しい方式の授業(フィンランド方式。生徒が主体、教師は正解を教えるのではなく生徒のサポートをする、……)に切り替わっていたようです。しかし、新しいやり方が導入されたと言っても実施するのは現場の教員です。現在の日本ではすでに新しい方式が導入されています。学習指導要領が主張する、生徒同士の対話が大事……とかいう流行りのアレですね。でも実際には浸透などしていません。特に(ぼくを始めとする)古い教員はなかなか新しいやり方には馴染めず(切り替える気すらなかったり……)相変わらずの授業を展開しているのです。フィンランドでもそんな感じだったのかも知れません、そういう古い授業を受けた生徒がPISAでよい成績を取ったのだ……という分析があるそうです。以降、新方式の導入から何年も経つと教員も入れ替わり、成績が落ちていった……ということらしいです。
 この辺の話については真面目そうなサイト、動画がたくさんあるので検索してみてください。すぐに見つかります。今回、たまたまYouTubeで見かけ、記事を書いています。
 日本にも「生徒同士の対話が大事」ということにしたい勢力は確かに存在します。ぼくは何年か私立の非常勤をやっていますが、学校を挙げてそういう実践をしているところもありました。しかし、ぼくはそこでいわゆる「授業崩壊」を教員になって初めて見ました。教員が何か説明しても私語が収まらない、授業で使うはずのタブレットでゲームをやっている、……。メチャクチャなのです。少し教員をやっていればすぐ感覚で分かるはずです。生徒を自由にしてタブレットを渡して「友だちと相談してください」、などとやれば教えるべきことなど伝わりっこありません。要するに、騒がしいだけで授業になるはずがないのです。フィンランドの話を聞いても「さもありなん」です。
 「新しい教育」を標榜する学校へ勤める気はもうありません。時間がもったいないです。そういう授業をやっている人は「生徒同士の対話は素晴らしい」というストーリーの中で教えています。彼らに、今回ここで書いたようなことについてどう考えているのか、聞いてみたい気はします。「学習指導要領にはこう書いてある」とかいう議論をよく見かけます。関係者が大勢集まって考えた教育の基本的な方針、まあそういう価値はあるでしょう。でも、せいぜいその程度の価値です。盲信してはいけません。ゆとり教育はスバラシイはずだったんでしょ?  そう言っていたのは誰ですか?