いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

生徒は「∴」(ゆえに)は教わってない?

 この前、授業中に生徒が「それ、何ですか?」と質問してきました。黒板にぼくが書いた「∴」(ゆえに、そういう理由で)です。ぼくが中学生のとき、先生が証明を書くときに使っていました。「∵」(なぜならば。これは多分高校からかも)も使っていました。もちろんテキストでも使われていました。生徒に聞くと「教わってない」と言います。いや、そう言えばここ10年くらいで何回か言われた記憶もあるような……。
 ネットで調べたら2000年前後から減り始め、2010年以降くらいから教えなくなったのだとか。指導要領(国が決めた、「高校ではこう教えよ」というやつ)で使われなくなったんでしょうね。ま、ぼくは使います。「ゆえに」(記号でなく、日本語)を使うのは「文章で書くことを重視している」ということなのだそうだけれど、頭の中では「ゆえに」なのだから何も全く問題ないですし、パッと見て「あ、ここはすぐ上の議論の結果なんだ」と分かるからです。字数も少なくて済むし。
 コミックスで『レース鳩0777』というのがありました。0777は「アラシ」と読みます。

黒田鳩舎で生まれた鳩(アラシ)を主人公の次郎君がもらい、アラシとともに成長してゆく……という話です。次郎君は指示されたとおり、足環(鳩の認識番号、0777を刻印してある)を左足につけます。しかし鳩レースではみな右足につけており、係の人に「あれ、この鳩、足環が逆だ」と言われます。次郎君は慌てますが、黒田鳩舎で働く人が「アハハ、うちで生まれた鳩は足環はみんな左さ。ルール上の問題はないから大丈夫。戦時中、伝書鳩には右足に文書を持たせていた。だから足環は左につけていたんだ」と教えてくれます。
 「何が何でも『∴』を使わねば!」……というわけではないですが、使った方がいいとは思います。ちょっと違いますがまあ黒田鳩舎みたいな感じです。仕事をしていると、学校によっては容認できない採点基準を見かけることがあります。いつか「証明に『∴』を書いたら減点だ! 指導要領に書いてないのだからダメに決まってる!」とか自信満々に言い出す人が現れる日が来るかも知れません。
 不思議なのは10月になるまでぼくはずっと黒板に「∴」を書き続けてきたのに、今まで誰も何も言わなかったことです……。生徒には「今までこの記号を何だと思ってたの? 『名所・旧跡』?」と言っておきました。