いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

「数学は自分で考えなければダメ」なのか?

 近いことはすでに書いていますが、少し詳しく。

 教員はすぐに「数学は自分で考えなければダメ」と言います。ある意味、これは真理でしょう。しかしそういうことを言う人たちは中学、高校、大学でどうやって勉強していたのでしょうか。「自分で考えなければダメ」なのですから、もちろんぼくも「自分で考えて」いました。が、同時に答えも遠慮なく見ていました。人間が使える時間、エネルギーには限りがあります。不老不死の仙人ではないのだから、適当なところで妥協しなければなりません。当たり前のことです。ガロアガウスならそんな必要もないでしょうが、失礼ながら大抵の人はガロアでもガウスでもないのです。

 数学が苦手な人は教科書の例題や問い、問題集の例題などを解き、分からなければ早めに答えを見て解き方を憶えるのがよいと思います。特に、生徒を見ているとなにしろ基本的な事実を憶えていないのです。これは大工さんで言えばカナヅチやカンナの使い方を知らない、に当たります。そういう大工さんに家は建てらませんよね。「カンナはこう使う」と憶えて練習し、しかる後に屋根をかけたり、玄関を作ったりするのが正しいやり方でしょう。例題の優れた解き方を憶えることです。その際、解き方は自分で考える必要など全くありません。こんなところで「オレはこう解くのだ!」なんてオリジナリティを発揮したって意味がないのです。時間はかかるし、しかもそれがよい解き方(←いろいろな場面に通用するとか、間違えにくいとか、発展性があるとか)である保証もありません。自分だけで思いつくことなど質も量もたかが知れている、ということです。「数学は自分で考えることが大事」、その通りだと思います。しかし「自分で考える」というのは、基本的なことを憶えた上でほんの少しだけできることなのだ、とまず知るべきです。先に基本的な、信頼できる武器を手に入れること。そしてそれを有機的に組み合わせる練習をするわけです。勉強をするのに一番大事なのは「人の書いたものを読んで(言っていることを聞いて)、それを理解すること」です。それが勉強というものです。そして、その後ほんの少しだけ、新しいことを見つけられるのです。
 ぼくは「数学は自分で考えなければダメ!」とか言う人のうちのかなりの人数は、きっと学生の頃は答えを読みまくっていたのではないかと疑っています。