いぬおさんのおもしろ数学実験室

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模範解答に「ここまでで部分点2点」と書いてはいけないのか

 いろんな考えがあるものだとつくづく感じました。

 中学、高校では定期試験というのがあります。各学期で中間試験、期末試験があり、学期の成績をそれで決めます(3学期は期末のみ)。例えば2年生を3人の教員で担当しているとき、その3人で試験を作ります。年度の初めに誰がどの試験を作るか(A先生が2学期の期末試験と3学期の期末試験を作る、とか)決めておくことが多いと思います。作成者は模範解答も作り、配点も決めます。担当者はそれを使って採点します。このとき、いわゆる「部分点」についても模範解答に書いておきます。特に記述問題などでは単純にマルかバツでなく、「ここまでできていれば10点満点中の7点」のように決めておくわけです。解答のみ求める問題でも、約分していなければどうするとか、近似値で答えてしまったらどうするかとか、単位の書き忘れをどうするかとか、採点の時に迷うことはたくさんあります。

 この模範解答にぼくは今まで「ここまでで7点」などと書くようにしてきました(実際には△7など(←7は△の中に))。これを、今までの勤務校で「書かないものなのだ、と教わった」と言う若い先生がいたのです。ブログで何回か触れた通りで、学校ごとにルールはたくさんあって、それ自体は業務の円滑な遂行のためには当然のことです。しかし……これはまずいでしょう……。

 昔は教員が生徒に口頭で配点を「1番(2)は3点、(3)から(6)までは2点、……」などと説明していた記憶もありますが、最近は(?)配点はもちろん部分点まで(ある程度)細かく書いておき、それを印刷して生徒に配布することが多いかも知れません。このとき部分点のあげ方、「この値が求まっていれば4点」などを書いていなければ、生徒は採点ミスに気づくことができません。申し訳ないですが教員も人間です、採点ミスは防げません。入試のように何人もが何度もチェックする仕組みは通常の定期試験にはありません(日程、仕事量として、ムリ)。でも場合によってはこれが成績の±1くらいに影響することだってあるし、その結果、評定平均値が変わるかも知れません。教員なら「評定平均が0.1足りなくて××大学に出願できなかった」と泣く生徒だっている、って知っていますよね? 自分は採点ミスしないつもりなんでしょうか。クラスの違う生徒同士が答案を見せ合って発覚することだってありますよ。要するに、ちょっと考えただけで「そりゃまずいだろ」と分かることなのです。そんなことを若い先生に教えてちゃダメでしょ

 なお、特に記述問題では教員の教え方による部分もあるので「この辺までできていれば××点、ここまでで○○点、……」とある程度の決まりだけ作っておき、それ以上の細かな部分は担当に任せるということもあります。例えば数学的帰納法による証明問題で、第2段階のアレ、「n=kのとき定理の成立を仮定する」というところ。高校ではこう書くけれど、大学のテキストでは「nのとき定理の成立を仮定すると」とやっている場合は多いです(n+1のときに成立することを示すことになる)。高校にそういう書き方をする先生がいると、教科書通りに「n=kのとき」と授業している人から見れば「なんだこりゃ」ということになるかも知れません(予備校の先生なら「n」でやっている人はいました)。他でも、ある先生は「このセリフ絶対に書かなきゃダメ」と説明しているけれど別の先生はそれを本質的だと思っていなくて「書かなくてもいいよ」と言っているかも知れません。要するに、一律に部分点を決めておけないこともあります。でももちろん、このときでも生徒に部分点の説明はしておかないといけません。

 教員(というか人間)は最初に教わったことに拘ります。いろいろあっていいはずなのに、「絶対にこうすべき」とアヒル並みに刷り込まれてしまうのですね。でも今回の部分点に関してはデメリットがはっきりしているんだから、「どうしても模範解答に書いてはいけない!」と主張するには相応の理由が必要だ、と言っておきましょう。