スターリングの公式を紹介しましょう。これを使うとn!(nの階乗。例えば5!=5・4・3・2・1=24)の近似値を求めることができます。しかし、そもそもn!というのはn!なんだから「何のための近似値なんだ?」と思うかも知れません。でも「nが増えるとn!は爆発的に増える」程度のことは分かっていても、例えば100!、5490!、9680019!などと言われてもどんな感じに値が増えているのか全く分からないでしょう。しかしこれが例えば
などと示せればn!の値の変化の様子がハッキリ分かります。スターリングの公式にはそんな意味があるのです。
さて、n!の近似値を求めます。いきなりだと難しいので、まず
を調べます。この式の中のeは「自然対数の底」と呼ばれる特別の値で、e=2.718281828459……という無理数です。高校で理系に進むと数学Ⅲで出てきます。知らない人は「ほう、そんな数があるのか」でO.K.です。logに関する公式を使って、
これは下の図のy=logexのグラフの下にあるn-1個の短冊(たんざく)の面積の総和です。短冊の幅はどこも1であることに注意してください。
これは
のグラフとx軸、x=n+1で囲まれた面積に近いでしょう。実はこの面積は
と表され、数Ⅲの知識でこれを求めると
と分かります。つまり
であることが分かったわけです。さらに、nが大きな数のときはn+1≒nと見てよいこと、また公式
などを用いれば
となります。これで
が分かりました。この式の両辺をeの肩に乗せれば
を得ます。
実はもっとよい近似式(精度がいい)があり、普通「スターリングの公式」と言った場合、そちらを指すようです。また、ここで示した式変形は相当雑ですが、とにかく今回は簡単に紹介できるものを取り上げました。