いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

回転の瞬時中心とは何か

 タイヤが右に回りながら速さvで動いています。図の点Qの速さがvということです。タイヤの半径はrとしておきましょう。少々無理があるような気もしますが、一瞬だけを考えれば線分PRは点Pを中心に右回りに回転しています。少しでも時間が経てばさっきの点Pは少し左上に移動してしまいますから、そう言えるのはPが地面に触れている一瞬だけなのですね。こういうPを回転の瞬時中心というのでした。そうすると、Qは線分PRの中点ですから点Rは右向きに2vの速さで動いているはずです。当たり前と言ってもいいでしょう。もっとちゃんと計算したいなら、その瞬間線分PRはPを中心に角速度ωで回っているとすると点QはPを中心に速さrωで回り(物理の公式ですね。半径×角速度=速さ)、点RはPを中心に2r・ωで回るのだから速さは2倍である、とやればよいでしょう。

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 高校のとき、この話を聞いて「うまいことを考える人がいるなあ」と感心した覚えがあります。ちょっとだけインチキくさいけれど、まあ正しいと言っていい、この感じ。面白いです。物理では(数学でも)こういうのが結構出てきます。例えば……状況は違いますが、斜面におもりを置き、摩擦で止まっている状態を考えます。徐々に斜面を傾けるといずれ重力の斜面方向の分力が最大静止摩擦力を超える瞬間が来て、つり合いが破れます。まさにその瞬間、2つの力が等しくなっているはずで、これを利用して滑り出すときの斜面の角度を計算できます……ということになっていますが、等しければ釣り合いは破れないわけで、まあよいのでしょうが少し違和感があります。ここでは説明は避けますが、熱力学に「準静的変化」というのもありました。同じ匂いを感じます。

 高校生のとき、駿台かどこかの高校生向け参考書でこうした微小量の変化を利用していろいろな理論を組み立てていこうというものがありました。読もうとして買って持っていたのですが、処分してしまったのか見当たりません。前書きがよくて「私は思うのである。狭い日本だが、きっとこの本を役立ててくれる高校生がどこかにいる、と」みたいなことが書いてありました。タイトルも思い出せないし、読んでみたいのですがどうにもなりません。本屋さんで高校生の参考書の棚の前を通るときには背表紙を眺めます。しかしそれっぽいのには出会えません。ちゃんと管理しておけばよかった……。

 数学も面白いのですが、やはり物理もよいものです。4月からは時間が取れるのでしっかり勉強するつもりです。