いぬおさんのおもしろ数学実験室

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正の数を無限個加えるとどうなるか

 正の数を無限個足すことを考えます。例えばa=0.1+0.01+0.001+……とか。このaは結局a=0.1111……と考えられますから、a=1/9ということです(1÷9=0.1111……)。正の数だからと言って、無限個加えれば結果はいくらでも大きくなる、というわけではないのです。いくらでも大きくなる場合は「和は正の無限大に発散する」と表現します。では次は?

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 1にその半分である1/2を加え、その半分である1/4を加え、その半分である1/8を加え、……と計算しています。高さ1mのブロックを積み、0.5mのブロックをその上に積み、0.25mのブロックを積み、……と繰り返すと高さは2mに近づくことが何となく分かるかも知れません。b=2なのです。これも、正の数を無限個加えてもちゃんとした値に落ち着く例でした。数学ではこの事実を「和は2に収束する」と言い表します。近づくだけで2にはならないはず、と思うかも知れません。しかし上のb=……の式は「近づき先を表す」と約束されているのです。「近づき先」は数学の用語では極限値と言い、高校の数学Ⅱの微分のところで出てきます。実はこの値が本当にb=2であることを示したければ数学Ⅲで勉強する無限等比級数という考えが必要ですが、ここでは説明しません。では次はどうでしょうか。

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 cはbと同じようにどんどん0に近づく数たちを総和しています。和はどのくらいになるのか? b=2だったからc=3くらい? ……実はなんと、cはいくらでも大きくなります。先まで計算すると100よりも、10000よりも大きくなるのです。いくらでも大きくなる、つまりcの和は正の無限大に発散するのです。これを示すため、次のdを考えてみます。

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1/8が4個並んだ後は1/16が8個並びます。次は1/32が16個です。dとcを比較すればd<cが分かります。cの1/3がdではそれより小さい1/4で置き換えられているし、cの1/5,1/6,1/7がdではそれより小さい1/8で置き換えられているからです。

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上の式で、dの下線pの部分もqの部分も合計が1/2に等しいことに注意すれば、下の式が成り立つことが分かります。

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つまりこのdは先まで計算すればいくらでも大きくなることが示せました(つまりdは正の無限大に発散する)。すでにd<cであることは確認できていましたから、結局、(cはdより大きく、dはいくらでも大きくなるのだから)cはいくらでも大きくなることが分かりました。cとdはどちらもどんどん小さくなる正の数の無限個の和なのですが、結果が全く異なるのです。

 大学で理系に進めば微分積分の授業で出てきます。大学の数学は高校の数学に比べて比較にならないくらい厳密、抽象的です。もちろん高校の数学が基礎になっていますが、別物……という印象です。楽しいです。