いぬおさんのおもしろ数学実験室

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連立1次方程式が解を持つための必要十分条件

連立1次方程式がどんなときに解を持つのか。高校で一般論は出てきません。整理しておきましょう。

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実は、次が成立するのです。

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証明しましょう。

 まず右向き。

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が解を持つことになります。ここで

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行列のランクとは、行列の列ベクトルで線形独立なものの最大個数のことでしたから、Aと[A b]のランクが等しいことが分かります。

 逆に rank A = rank [A b] だとしましょう。

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(追記: つまり、解が見つかった!)

そうでないとするとランクが等しくならない(右辺が大きくなる)からです。

 

 以上です。一般論が出てこないなら勉強しておかなくてよい……というわけにはいかないと思います。高校の先生にとって、勉強している生徒に「解があったりなかったり、どういうことなんですか?」などと聞かれるのはちょっと嫌かも知れません。「ランクという考え方があって、それを使うと……」と説明してあげればよいでしょう。線形独立な列ベクトルの最大個数でランクを定義すれば、高校で勉強する線形独立の知識がすぐ使えて、上の証明はそのまま理解できます。なお、図形的に考えて理解することもできると思います。