いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

『オンラインの微笑(ほほえみ)』紹介

 古い推理小説です。『オンラインの微笑』(鳥井加南子1990新潮文庫)を紹介しましょう。新婚の妻、今野(こんの)数美はパソコン通信が趣味です。新居に引っ越して1年、地元との交流もあまりなく、パソコン通信の面白さが分かってきました。そんなとき、数美は1通のメールを受け取ります。物騒な内容で、数美には覚えがありません。これがきっかけで数美が属するネット「アッコのBBS」の、彼女のオンラインの知り合い、メンバーたちが大きな事件に巻き込まれてゆきます。どんでん返しもあり、ぼくは「えっ」と思いました。パソコン通信を始めるまでの苦労、始めたときのワクワク感、ログインしてからの画面の変化の様子なども詳しく書かれていて、今読むととにかく懐かしいです。「 そうそう、まさにこういう感じだよ」みたいな。パソコン通信世代のみなさんにはお勧めです。

  パソコン通信はインターネットとは異なります。掲示板を読み書きすることもメールのやりとりをすることもできますが、大分違います。パソコン通信は大手が運営する「局」から個人が運営する「局」まで、どこかの局の会員(と言っていいか分かりませんが)になっていないとできません。そして、その局にある掲示板しか見られませんし、同じ局のメンバーでないとメールのやりとりができません。パソコン通信もネットワークだけれど使っているのは公衆電話回線。だから通信中は他から電話がかかると話し中になっています(そういう話がこの本にも出てきます)。それでも同じ局に入っていれば家に居ながらにして情報のやりとりはできるし、友人同士でPCからいつでもメールを送れる、チャットもできる。夢のある話でした……。