数学者ヒルベルトが考えた面白い話です。本来「パラドックス」とは「正しい仮定から正しい推論をしているのに、出てきた結果がおかしい」というものですが、その意味では今回紹介する話はパラドックスではありません。「直感に反している」ぐらいの意味です。
無限ホテルがあります。無限ホテルには図のように無限個の部屋があります。
あるときこの無限ホテルは満室でした。図のように1号室、2号室、……すべてにお客さんが泊まっています。
ここにどこかから1人、新たにお客さんが来ました。普通のホテルでは「満室です」というところですが、無限ホテルは違います。支配人は1号室の客を2号室へ、2号室の客を3号室へ、……一般にn号室の客をn+1号室へ移動させました。
これで1号室は空きました。ここに新しい客を入れればOKです。同じようにすれば、1人でなく、2人が来ても3人が来ても大丈夫ですね。
さて、満室の無限ホテルの隣にやはり満室のもう1軒の無限ホテルがあります。そこから無限人の客が一斉にやって来ました。全員、泊めることはできるでしょうか。支配人は1号室の客は2号室へ、2号室の客は3号室へ、3号室の客は5号室へ、……一般にn号室の客を2n-1号室へ移しました。
こうして空いた2号室、4号室、6号室、……に無限人の新たな客を入れればよいのです。
さあ、今度は無限個の無限ホテルからそれぞれ無限人の客が一斉にやって来ました。支配人はこう考えます。
ホテルをこのように並べます。そして、元のホテルの客も含め、次のように番号を振ります。
こうして全ての客に番号が振られました。全員を、元のホテルのその番号の部屋に泊めればよいのです。
……ぼくはこの話を何回かこのブログで紹介した『逆説論理学』(野崎昭弘1980(中公新書)で読みました。今手元になく、最後のところがこういう解決法だったかどうか記憶が曖昧です。やり方は他にもあります。初めて高校生のときに読み、とにかく面白い本で驚きました。www.omoshiro-suugaku.com
この本を面白がる人は「問題さえ解ければ理屈は分からなくてもいい」とはならないと思います。きちんと考えることの楽しさ、大事さを追求した本だからです。宿題を出すとか、もちろんそれはそれで必要な部分もあるけれど、もっと大切なことがあると思います。