皆さんは「共役複素数」の「共役」をどう読みますか? 「きょうやく」か「きょうえき」か。前、近くの人に聞いたら結構「きょうえき」の割合が多かったような……。まあどっち道conjugateの訳ですし、数学の用語なのですから意味が正確に伝わればよいのだとは思うんですが……。
昔、これを「共軛」と書いたのだそうです。「軛」は訓読みで「くびき」、音読みで「ヤク」。つまり、もともとは「きょうやく」と読まれていたのですね。しかし旧仮名遣いが改められ、「軛」の字を使えなくなりました。そこで同じ読みを持つ「役」をあてたのだそうな。
ではなぜ「軛」(くびき)の字を使ったのでしょうか。軛とは、「頸木」なのです。辞書では「車の轅(ながえ)の先につけ、牛馬のくびにあてる横木」と。牛2頭を同じ頸木につないで荷車を引かせたり……ということなのでしょう。ネットで画像を検索するとすぐ見つかります。さて、共役複素数同士はある意味、仲間です。同じ頸木につながれた牛たちのように! 例えば、実係数のn次方程式は必ず共役複素数をペアで解に持つのでした。そういうことなのです。
この話、このブログで何回も書いている矢野健太郎先生のエッセイで読んだ気がします(やや怪しい記憶ですが)。高校生の頃よく読みました。絶版なのかあまり売っていませんが、惜しいことです。