いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

虚数は実在するのか?

 「複素数」というのが数学に出てきます。「1 + 2 i」のような形の数を言います。iは虚数単位と呼ばれ、i^2=-1なのでした(「x^2」でxの2乗を表すものとします)。i がついてない数は実数、i がついた数は虚数と呼びます。例えば 実数である1 は、1=1+0 i なので複素数の一種と考えるのでした。

 さて、教科書では「i^2=-1となる新しい数iを考え」みたいに書いてあります。しかし「どんな数だって2乗したら0以上になるはずなのに……」と考えるのが自然というものでしょう。ぼくが高校生の時に「数学は実際には存在しない数を相手にして何かやってる」みたいなことを言っている友だち(数学を攻撃している。しかも理系)もいました。ぼくは数学が好きだったのでなんとか数学を弁護したかったのですが、当時はそのための知識もなく悔しい思いをしたことを憶えています。

 iはしっかりした実在です。例えば 1 + 2 i という複素数は (1,2) という数のペアなのです。これを見やすくするため(あるいは歴史的な事情で)iを使って 1+2 i と表すのです。また i = 0 + i = (0,1)です。そして (1,2) +(3,4)=(4,6)というように足し算を、(1,2) × (3,4) = (1・3-2・4,1・4+2・3)=(-5,10)でかけ算を約束します((a, b) × (c, d) = (ac-bd, ad + bc) と約束)。このとき

i × i = (0,1) × (0,1) = (0・0-1・1,0・1+1・0)=(-1,0)=-1 、つまりi^2=-1となって、辻褄は合います。

 虚数は実在します。「ない」というのは、「実数の世界にはない」というだけのことです。人によっては自信満々に「虚数なんて存在しない」と言いますが、事実を知らないだけなのです。