いぬおさんのおもしろ数学実験室

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これでよいのか、線形計画法の問題の解答

 線形計画法の最も基本的な問題が数学Ⅱに出てきます。次のような問題を考えましょう。

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点(x,y)が次の連立不等式 x+3y≦9, 2x+y≦8, x,y≧0

を満たす領域を動くとき、x+yの最大値を求めなさい。

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 大体の図は描いておきました。水色の四角形の周および内部(領域Dと呼びましょう)の点のうち、x+yの値を最大にする点を見つけます。

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x+y=kとおきます。kを最大にすればよいわけです。この式はy=ーx+kと変形できますから、図形的には(一部が赤くなっている)傾き-1、y切片がkの直線を表します。この直線が領域Dと共有点を持った状態でkを最大にするには、直線が(3,2)を通ればよいですね。式にx=3,y=2を代入すればk=5と分かります。

 ……とまあ普通の解答はこんなもんでしょう。生徒はこれを見てどう思うのでしょうか。これだけで分かるのか不安なので、ぼくは次の2点、特に②を強調します。

k(=x+y)を最大にする点は領域Dから選ぶ。例えば(1,1)を選ぶとk=2、(2,1)を選ぶとk=3、……。

赤い線分から点を選ぶと、どれを取ってもx+yの値はk。すなわち、領域Dは線状に分けられていて、どの線分を選ぶかでx+yの値は決まる。その値は切片に等しい。

②はなぜ成立するのか? 赤い線分上の点はどれもy=ーx+kを満たします。よってx+y=kとなります。だからどの点を選んでもx+yの値はkになるのです。

 領域Dから点を自由に選べるが、x+yの値は線状に決まる。その値は切片に等しい。切片を最大にすればよいのだから(3,2)を通せばよい。ぼくはこうして「線状に値が決まっている」と明確にしておいたほうがよいと感じています。そうしないと「領域Dのたくさんの点たちは一体何をやっているの?」ということになりそうな気がするからです。値をkにしたければ赤い線分上のどの点を取ってもよいのです。ただ、kを最大にするには直線を(3,2)を通さなければならず、そのとき「赤い線分」はただ1点、(3,2)だけになってしまうのだ、ということです。

 世の中ではもっと規模の大きな問題が出てきます。不等式は800本、変数は1700万個の問題もあるそうな。もちろんそういうときはパソコンで線形計画法の問題として最大値や最小値を調べます。そんな話もついでにしてあげるとよいと思います。