いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

偶順列、奇順列について

 1から7までの自然数を並べます。並べ方は7!通りあるのでした。並べたひとつひとつの列を順列と呼びます。従って順列は全部で7!通りあります。この順列に対し、転倒数という数値を定めます。例えば順列「1274356」を考えます。先頭は1。この1より大きい数は全部右にあるので大小は正しい。次の2も、右にあるのは全部2より大きな数なので大小は正しい。しかし次の7は大小が狂っているところがあります。4,3,5,6は7より小さいのに右にあります。4カ所、狂っているわけです。次の4は、右に3があるので1カ所、狂っています。つづく3、5、6は狂いはありません。もちろん例えば7,4のペアは、狂いは1カ所とカウントします。これらの合計を4+1=5と計算して、これを順列の転倒数と呼びます。全てのペアを考えて、順序が狂っている数、ということです。これで順列に対して転倒数を定義できました。この転倒数が偶数である順列を偶順列、奇数である順列を奇順列といいます。最初の順列は転倒数が5なので奇順列です。

 さて、順列で、隣り合う数を入れ替えることを考えます。このときもちろん転倒数は1だけ変わりますから、偶順列は奇順列に、奇順列は偶順列になります。なお転倒数が増えるのか減るのかは場合によります。では隣り合っていない2数を入れ替えるとどうなるでしょうか? 具体例で考えれば簡単です。赤の2数を入れ替えましょう。

1274356

いきなりだとよく分からないので、順に考えてゆきます。まず7と右隣の4を入れ替えます。

1247356

隣り合う2数の入れ替えですから、これで転倒数は1変わりました。

1243756

また転倒数が1変わりました。

1243576

また1変わりました。以下同様です。

1245376

1254376

 これでもとの7,5が入れ替わりました。結局転倒数は5回、増えるか減るかしたのですから、もとが奇順列だったので入れ替え後は偶順列のはずです。他の2数でも同様(どの2数の入れ替えも隣同士の奇数回の入れ替えで実現できる)なので結局、順列のどの2数を入れ替えても偶順列は奇順列に、奇順列は偶順列になることが分かりました。

 数学に行列というのが出てきます。ここまでですでに何度も話題にしていて、立体の再現の話では使いっぱなしでした。この行列に対し、行列式という値が定まります(「正方行列」のみ)。n元1次の連立方程式は行列を用いて表すことができ、この行列の行列式が0でなければ解はただひとつで、それを求めることができます。この行列式の定義を偶順列、奇順列を使ってできます。普通の数学のテキストでは「置換」というものを用いて説明してあり、こちらは記号で書くと初めての人にはいかにも恐ろしく見えそうです。偶順列、奇順列の方が取りつきやすい感じです。

 いずれ行列式の話も書きましょう。