いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

計算尺の仕組み

 昔、計算尺という器具がありました。ぼくは父にもらったものを持っていますが、amazonで少し見ましたがなさそう……。雑誌の表紙には載っていました。 『対数の威力』とあります。今回は対数を使ってかけ算、割り算を楽に計算する器具、計算尺の話です。

Newton 対数の威力

Newton 対数の威力

 

写真でギターの下に写っている器具が計算尺です。 計算尺は外側の物差し、内側の物差しとカーソルから成ります。外側は固定尺、内側は滑尺(すべりしゃく)と呼ばれ、透明で1本線が入っているのがカーソル。

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1980年頃には関数電卓が安く買えるようになり、見かけなくなってしまいました。それまでは理系の人たちはみんな、これを使っていろんな計算をしていたのです。ジブリのアニメ、『風立ちぬ』では主人公の飛行機設計技師が計算尺を使っていました。
 原理は単純で、

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と、これだけ。ポイントは、もとのかけ算のかわりに5+6という足し算で済ますことができるということです。実際には2の整数乗で書ける数ばかりではないですし、計算尺で使われている底(てい)は10(2の累乗ではなく10の累乗を使う、ということ)ですが、まあ原理は↑こういうことです。
 もう少し詳しく見てみましょう。

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普通の定規とは違う目盛りが書いてあります。対数目盛と言います。少しずらして上下に並べました。この目盛は、例えば上側で説明すると……

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となっています。そういう目盛りが打ってあるのです。今、2×3を計算したいとしましょう。上の図で

AC=AB+BC=

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です(対数の公式を使いました)。目盛りを読んで6。つまり2・3=6であることが分かります。この目盛りを使ってかけ算を実行できたわけです。
 今では計算尺はありません。では対数目盛ももう見かけないのかというとそうでもありません。大学へ行くと実験の結果の整理に対数方眼紙というのを使うことがあります。世の中の現象を数式で表すとき、対数を使うときれいな式になることがたくさんあるのです。