いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

あれ?と思った証明ふたつ

1. ある定理(ある級数の収束に関する定理)の証明の最後の方に右のような不等式が出てきました。nは自然数(1,2,3,………)です。
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なぜ成立するのか特に何の説明もないですし、じゃあ簡単に示せるのか? (最悪、導関数を求めて証明できるんだろうけど)しばらく悩んでいて、そのうちに「あ……!!」。「相加平均、相乗平均の関係」というのがあったのでした。
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が成立します。これを用いて
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でいいんですね。ヤレヤレ……。
2. ちょっと変わった(?)証明。定理「x^{5}-x+a = 0……★ が重解bを持つときは、5b^{4} = 1が成立する」を証明します。
 bが★の重解ならば、p(x)を3次の多項式としてx^{5}-x + a = (x-b)^{2}p(x) が成立します。これは恒等式ですから、xに何を代入しても成立します。そこで両辺にx=b+εを代入してみます(ε ≠ 0 とする。εは「イプシロン」)。すると (b + ε)^{5} -(b + ε) + a = ε^{2}p(b + ε) を得ます。左辺を計算すれば b^{5} + 5εb^{4} + ε^{2}(10b^{3} + 10b^{2}ε + 5bε^2 + ε^3)-b -ε + a =ε^{2}p(b + ε)……★★となります。5乗の展開には2項定理を使えばいいでしょう。bは★の解なのでb^{5}-b + a = 0が成り立ちますから、これを★★の左辺に代入して、 5εb^{4} + ε^{2}(10b^{3} + 10b^{2} ε+ 5bε^2 + ε^3)-ε = ε^{2}p(b + ε) が成立。両辺をεで割ると 5b^{4} + ε(10b^{3} + 10b^{2} ε+ 5bε^2 + ε^3)-1 = εp(b + ε)
5b^{4}-1 = εp(b + ε)-ε(10b^{3} + 10b^{2}ε + 5bε^{2} + ε^{3})
ε( ≠ 0) はどんな数でもいいので、いくらでも0に近い値を使えます。このとき最後の式の右辺はいくらでも0に近づきます。ところが左辺は定数ですから、この左辺は0でなければなりません。これで 5b^{4} = 1 が示せました。
 いや、正しい証明なんだけれど、「うーん」と唸ってしまいました…。