いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

確率のパラドックスをひとつ……

 割合(ここでは確率)のちょっと不思議な話を書きましょう。
 袋A、A’、B、B’にくじが入っています。内訳は次の通りです。
袋A  くじは10本。そのうち当たりは3本。当たる確率は3/10。
袋B  くじは60本。そのうち当たりは17本。当たる確率は17/60。
袋A’ くじは30本。そのうち当たりは5本。当たる確率は5/30。
袋B’ くじは60本。そのうち当たりは9本。当たる確率は9/60。
Aから当たりを引く確率はBから当たりを引く確率よりも大きいですね。
3/10=18/60と書き直せば分かります。そしてA’から引いて当たる確率は5/30=10/60なので、A’とB’とではA’が当たりやすいです。さて、今、AとA’を混ぜて袋Xにまとめます。BとB’も混ぜて袋Yにまとめます。このとき、X(AとA’を混ぜたもの)から引いて当たる確率と、Y(BとB’を混ぜたもの)から引いて当たる確率、どちらが大きいでしょうか? A、A’はどちらも当たる確率は高い袋なのですから、これらを混ぜたXから引いた方が当たりそうな気がしますが……。
 通常通り、Xから引いて当たる確率を求めると、40本中に当たりは8本、よって8/40=24/120。Yの方は、120本中に当たりが26本、よって26/120。Yの方が当たりやすいのです!! なぜこんなことが起こるんでしょうか……??
 要するにぼくたちの錯覚、勘違いなのです。Aの方がBよりも当たりやすいし、A’がB’より当たりやすいからと言って、混ぜたときにA,A’を混ぜたものの方が当たりやすい保証はないというだけのことです。Bの中身を10000本、そのうち当たりを2999本としてみれば納得できるはずです。この場合、Xから引いて当たる確率はもちろんさっきと同じで8/40=0.2ですが、Yの方はBの本数が極端に多いためおよそ0.3になってしまいます。A’の中身を調整して、Xから引いて当たる確率を0.3より小さくできるのです。そういうこと。