『重積分』(中沢貞治1976共立出版数学ワンポイント)を紹介します。本のタイトル通り、重積分について解説してあります。重積分とは変数が2個、3個、……の積分です。最近では分かりやすいテキストもたくさんありますが、この本は奇をてらうこともなく、理論的にきちんと一歩一歩、しかも簡潔に議論を進めます。
第1章では歴史的に数学者たちがどのように求積してきたか、楽しく説明しています。現代の積分の議論は2章からで、関数の連続性、実数の性質、切断、上界と下界、上限と下限、……と分かりやすく丁寧な話から、積分、重積分へ続きます。
ぼくの場合、数学のテキストはまず大抵「これ、どういう意味だろう」とか「こことここはどうつながるんだろうか」とかなるものですが、それがありませんでした(賢くなった気分が味わえました……)。ページ数は限られていますが、基本はがっちり手に入るという感じです。
上界、上限といった話を読んでいると大学に入ったばかりの頃、数学を勉強し始めた頃のワクワク感を思い出します。