近い話は前に書いたのですが、まあいいでしょう……。
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教科書の複素数の導入はだいたい以下のような感じです。
を満たす特別の「数」i を考え、これを虚数単位と呼びます。この i を使った新しい「数」、a + bi を複素数と言うことにします。そして、この形の2つの数、a + bi と c + di に対し、和を a + c + (b + d)i と定義し、積を……と定義します……。
i が存在すると考えていいのかどうか、それは今はおきましょう。上の記事で書きました。それはいいとしても、「和を×××と定義し、積を×××と定義」というのはどうでしょうか。「定義」という言葉を使っているから何となく数学っぽい気はしますが、ヘンな話です。「a + bi」の「+ 」って何ですか? あるいは「bi」の「b」と「i」の間には何も書いてありませんが、積のつもりでしょう。つまり、複素数同士の和と積を定義する前に、すでに和と積を使ってしまっているのです。
どっちみち、この話では i の定義からして曖昧です(「存在すると考える」って言ったって、そういうものが存在しなかったらどうするの?……ということ。詳しくは過去の記事を参照)。だからここだけ厳密にしてもあまり意味はないかも知れませんし、そもそも歴史的にはまず何となく虚数を使うようになり、理論的な裏付けは後になってから……ということだったのではないかと想像します。最初から理屈、理屈とやるのが正しいということでもないでしょう。それでも例えば授業で「おかしいですよね」と指摘するのはいいことだと思います。教科書に書いてあることが真実、というわけではないのです。