1冊目に続き、『引き抜き屋(2)鹿子小穂の帰還』(雫井脩介2019PHP文芸文庫)を読みました。
いやー、面白かったです。(1)も(2)も短編が3つずつ入っています。色々な業界の色々な事情の会社にヘッドハンター鹿子小穂(かのこさほ)が関わり、小穂も成長してゆきます。ヘッドハンターとは、優れた人材がよい会社に転職する、その手助けをする職業の人です。しかし単純にそれだけなのではありません。その人物のキャリアについて「今は社長を経験しておくとよい時期だ」などということも考えたりします。転職する人の人生、会社の成長に直接関わる仕事なのです。著者は取材をしっかりしているのでしょう、丁寧にヘッドハントの手順を書いています。ぼくは初めてで、それだけでも興味深かったです。話も「うまく読者を引きつけるなあ」という感じ。最後の短編を読んでいるときは「ああ、もうすぐ読み終わってしまう……」と残念でした。著者は他にもいろいろ書いているようなので、読んでみようと思いました。
今回も思ったけれど、読書というのはやはりよいものですね。作家、阿刀田高(あとうだたかし)氏は「読書保険」というのを著書の中で主張しています。
「本は安いし、面白い。読めば知識を得られることもあるし、歳を取って体力がなくなっても読書はできる。おまけに読み終わったら売ることだってできる。本を読む習慣を身につけておけばこんなにいいことがある。保険に入るみたいなものだ。これほどいい趣味はない」とまあ、大体こんなところです。確かにその通りだし、外食や病院の待ち時間、通勤時間、何かを待つことが嫌でなくなります。お茶とお菓子を用意して読んだりしていると贅沢で豊かな気持ちを味わえます。ぼくは新書を多く読みますが、この新書がまた凄い。およそ、人間が興味を持ちそうなことが何でも本になっているのです。中学生、高校生だったぼくは講談社のブルーバックス、現代新書をずいぶん読みました。ブルーバックスは主に自然科学系、現代新書は文科系のテーマを扱っています。「大学ではこういうことを勉強できるんだ!」ととにかくワクワクしていました。昔読んだこれがきっかけで勉強するようになったテーマもたくさんあります。優れた本は人生すら左右する力を持っています。そんな本を読まない手はありません。