いぬおさんのおもしろ数学実験室

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グラム・シュミットの直交化法を分かりやすく説明する

 線形独立(1次独立)な3個のベクトルをとします。これらから直交する3個のベクトルを求めます。今回紹介するのはグラム・シュミットの直交化法というものです。説明は3次元空間でしますが4次元以上でも成立する方法です。

 まず準備。ベクトルと、単位ベクトルを考えます。は線形独立としておきます。

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が乗っている直線へのの正射影ベクトルは

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と表せます。このベクトルはaのeと平行な成分です。が単位ベクトルであることに注意して下さい。以下ではこれを使います。

 

をその長さで割って単位ベクトルにする。

ー() を求め、それを単位ベクトルにする。これをとする。

ー()ー() を求め、それを単位ベクトルにする。これをwとする。

 

こうしてでき上がったは直交しています。実際、u・(ー()) = 0 、u・(ー()ー()) = 0 などが成立するからです。ここでu・u = 1 、u・v = 0 などを使っています。

 この方法の直観的な意味を説明しましょう。②ではからに平行な成分を引き算しています。だから引き算の結果はと直交するのです。③ではからに平行な成分と、に平行な成分を引き算しています。だから引き算の結果はにもにも直交するのです。

 初めてこの方法を知ったのは大学の線形代数のテキストででした。「いったい何を言いたいんだろう……?」と思いましたが、図形的な意味を考えたら「なるほど、なるほど……」。しかしそれなら最初からそういう説明を書いておいてくれればいいのに、と思いますが、まあ数学は「そういうのは自分でイメージして下さい」みたいな感じですよね……。

 線形代数を大学で勉強した印象は「抽象的」。抽象的なものも慣れればそのまま何となく具体的な存在に思えてくるものですが、難しそうなことをやるなあ……と思っていました。微積分は「精緻」という印象。特に一様収束とか、収束・発散の判定とか、よくぞここまで細かなことを厳密に考えたものだ、と感心していました。まだ若かったし、何をしても面白かった……!!