いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

円周率の値の範囲を正確に求める

 円周率πの範囲を調べましょう。π=3.14……だということはご存じだと思います。しかし、「証明しろ」と言われたら? これは結構難しい。実は前、東大の入試で円周率の値に関する問題が出ていたそうです。「円周率πとするとき、π>3.05 であることを示せ」というものです。コミックス『ドラゴン桜』にも載っているそうな。念のため、円周率とは「円周の長さ÷直径」のことです。ぼくもやったことがありますが、茶筒かなんかに糸を巻いて茶筒の直径で割り算すればだいたい3.1くらいにはなりますが、これでは証明になっていません。
 ちゃんと考えましょう。半径r=1の円では円周L=2πr=2πなのだから、東大の問題は L>2×3.05=6.1 であること、つまり L > 6.1 を示せば解決、となります。下の図を見てください。

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半径1の円に正8角形が内接しています。この正8角形の周の長さを求めてみましょう。図の3角形で余弦定理を用いて

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ゆえに

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よって a>0.764 となります。なお、

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であることに注意してください。辺は8本あるから、(正8角形の周)>0.764×8=6.112。円周Lの方が正8角形の周は長いのだから、L>6.112 が成立。これで L>6.1 が示せました。面白い……。


 π>2.8 ならもっと簡単に示せます。同じように、下の図を使います。

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なので、(正方形の周)>1.4×4=5.6。円周L=2π はこれよりも長いですね。だから 2π>5.6。よって π>2.8。これだけです。正方形でなく、正6角形を使えばπ>3を示せます。