いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

読書について、少し

 読書についてつれづれなるままに。

 ここ数日、本屋さんの前で買おうか、買うまいか逡巡しています。

オペラで楽しむヨーロッパ史 (936) (平凡社新書)

オペラで楽しむヨーロッパ史 (936) (平凡社新書)

 

学生時代に歴史をあまり真面目に勉強しておらず、基本的な知識がありません。だから、あまり考えずに本を買うと理解できなくて残念な思いをする、ということがあるのです。高校生の頃、考えてみれば浅はかでした。「もう終わったことを憶えて何になる」というわけです。しかし池上さんの本などを読むと歴史の大切さが分かります。仕事を始めてずいぶん経ってから「これはまずい」と思うようになり、ときどき歴史の本を買って読んでいます。今回の本を抵抗なく読めるくらいの知識が欲しいです。

  高校時代から、小説はあまり読んでいません。推理小説は読みますが。代わりに新書はずいぶん読んでいます。今もいつでも大抵何か読んでいます。専門は数学だし物理や工学も好きなので自然、そうしたものが多くなります。それはそれでよいのですが、あえて違う分野のものも読むようにしています。どこで何がヒントになるか分かりません。現在の分子遺伝学(DNAが活躍する)だって、旧来の生物学の発想(例えば生物を細かく分類するとか)からは絶対に生まれてこなかったはずです。

  本を読んでいない若い先生に出会うことが少なくありません。「読むといいと思いますよ」とか言いたくなりますが、教育実習ではないのですからあまり言いません。そういう先生たちは生徒に「本を読みなさい」と言わないのか、それとも自分は読まないのに言うんでしょうか。いずれにしてもよくありません。特に後者だと、もはやこれは最もタチの悪いジョークです。ここ10年くらいでしょうか、教員は「研修」と称してあちこちに引っ張り出されることが多くなりました。例外はありますが大抵はつまらない内容です。特に若い先生は「アクティブラーニング」をやらされるようです。 

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そんなヒマがあるなら、こうした状況を考えて読書の大切さを訴える方がいいと思うんですが……。経験上、社会科の先生は本を多く読んでおり博識です。教科の性質上、そうでなければどうにもならないからかも知れません。代わりに数学や理科の先生は読んでいない人が多い印象です。

 何年も前の教育実習生の話です。打ち合わせのとき「どんな授業をしてみたい?」と聞いてみました。彼は高校の頃塾に行っていたらしく、「あんなすばらしい授業をしたい」(受験テクニックを教えたい、の意)と。ぼくはビックリして聞いてみました。「君はこんな話を生徒にできる? ぼくが通っていた大学には敷地を走る『ループ』と呼ばれる道路があって、たまに学生が車で曲がりきれずに事故を起こしていました。数学科の学生の間では『カーブがクロソイドに沿って設計されていないんだよ』という噂でした。クロソイドって知ってる?」「いいえ」「曲率(曲線の各点での曲がり具合を数値で表したもの)がじわじわ変わる曲線です。道がカーブにさしかかるとき、直線にいきなり円弧をつないであるとそのつなぎ目でドライバーが瞬間的にハンドルを2,3周しないと曲がりきれずに飛んで行っちゃう。円弧じゃなくてクロソイドをつなげばハンドルをじわじわ回せばよくて安全に曲がれるわけ。そういう話をできないでいて薄っぺらな受験テクニックを教えて『これが数学だ』なんて恥ずかしくないの?」 ……実習生の先生は多分、分かってくれたみたいです。ぼくが生徒だったら、多少高校数学をはみ出たっていいから1日にひとつくらいは「今やっている勉強は将来こういう話(数学)につながる」とか「こういう部分に深い数学が使われている」とか「世の中の××がこういう具合に数学的にできあがっている」とかいった話を聞いてみたいのです。彼は、聞けば学生時代は好きなこと(サークルなど)ばかりやっていて、本など読みませんでした、勉強にも力を入れていませんでした、と。クロソイドの話はちょっと本を読めば書いてありますし、勉強のきっかけにだってなるはずなのに……。「受験テクニック=薄っぺら」とはもちろん限りません。受験テクニックだって必要なんだと思います。しかし、少なくとも教育実習でやることではないでしょう……。

 ……というわけでたまにはこういう記事も。