いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

第1宇宙速度とは何か

 高校生の頃は科目の中では物理が一番好きでした。同じ理科でも生物や化学などは結局いろいろ憶えなければならなくて、ぼくはそれがダメ。意見はあるかも知れませんが、その点物理は全然違います。いくつかの公式や物理法則はもちろん憶えなければならないけれど、あとは問題を見て自分で考えてそれをうまく組み合わせるだけです。しかし物理の面白さはそこではありません。「少数の物理法則だけで物体の運動、温度の変化、……世の中の現象がどう起こるかどう変化するか、全部理解できる!」と思わせてくれるところです。
 よく「遠心力」と言いますよね。自転車でカーブを回っているときに感じる、アレです。紐におもりを付けて回しているとき、重りが紐に引っ張られる力と重りに働く遠心力がつりあっていると考えられます。物理学の教えるところによると、質量mの物体が速さv、半径rの円運動をするとき、その物体に働く遠心力は

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です。また、地表付近では質量mの物体に働く重力はmgです。ここで、gは重力加速度と呼ばれる定数です。
 地表付近でボールを水平方向に投げます。思い切り投げれば遠くに落ちます。さらに強く投げればもっと遠くへ。さらにさらに強く投げれば……地球を地表に沿って1周して投げた自分に当たります。物理を勉強していないなら「そんんなバカな……」と思うでしょうが、これ、実際に起こっています。地球を回っている人工衛星です。原理はまさにさっきのボールと同じなのです。
 さて、この人工衛星の速さを求めましょう。人工衛星が進行方向に(直線に沿って)吹っ飛んでいかず、地球に落ちもしないのは遠心力と重力が釣り合っているからです。さっきの式を使えば

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ということになります。

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両辺をmで割れば

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よって

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です。gはさっき書いた通りで重力加速度、値はg=9.8(メートル毎秒毎秒)くらいです。rは回転の半径。人工衛星が地表ギリギリを回るとして、rは地球の半径、つまりr=6500000メートル(6500キロメートル)くらいです。これらを★に代入して

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となります。人工衛星は毎秒7.9kmで飛んでいるのです! この速さ、秒速7.9kmは第1宇宙速度と呼ばれます。水平方向に秒速7.9kmで人工衛星を打ち出せば、そのままの速さで地球の周りを回り続けるのです。
 高校生の時、この「第1宇宙速度」という言葉の響きがカッコよくて好きでした。第2宇宙速度というのもあります。真上にボールを投げます。強く投げれば高くまで上がって落ちてきます。もっと強く投げればもっと高く上がって落ちてきます。さらに強く投げると……。実は投げる速さがある限度を超えるともう戻ってきません。これが第2宇宙速度、計算すると毎秒11.2kmです。計算にはもちろん物理の知識を使います。
 高校生の時に「物理に進むか、数学に進むか」と考えていた頃は、勉強している内容は今に比べればずっと易しかったけれど、大学で何を勉強しよう、どっちにしよう、とワクワクでした。