いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

クラメールの公式を導く

 タイトルの通りです。連立1次方程式の解法なのですが、実際にこれを使って解いたりはあまりしないでしょう(行列式を求めるのが面倒だから)。しかし、知らないと線形代数の各種定理の証明などですぐ困る、そういう定理です。

 まず復習から。

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とします。この行列Aに対し、各成分の余因子というものを定義するのでした。例えば

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のことです。下のように、対応する成分を含む行、列を除いた行列の行列式に+かーの符号をつけたものです。

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また例えば、

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このとき、行列Aの行列式Dは、Aの第1列で展開すると

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と表されるのでした。復習はここまでです。

 

 さて、次の連立方程式を解きましょう。

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を得ます。ここで、

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これが次の行列式(を第1列について展開したもの)に一致するからです(同じ列が含まれるとき行列式は0)。

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また④の右辺は

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ですから、結局次が成立します。

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ただしD≠0としました。他の変数も同様ですから、次の定理が証明できました。

 

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 うまくできている証明で、初めて見たときには「おお、これはスゴイ!」と思ったものです……。