いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

共通テスト数学ⅡBの自転車の問題。やめた方がいいでしょう……

 受験生の皆さん、お疲れ様でした。まだ先がありますが、とりあえず共通テストは終わり。しかし、ネットで評判を見るとⅡBの、特に自転車の問題がいろいろ言われているようですね。本文を載せたいところですが著作権でまずいでしょうから、まだ見ていない人は検索してください。すぐ見つかると思います。

 Aさんが歩いて家を出ます。少し経ってからBさんが自転車で追いかけます。追いついたら2人でそこで止まってしばらく話をし、Aさんはまた歩き始めてBさんは家に戻ります。Bさんは少し休んで、またAさんに向かって走り出し、追いついたら2人で止まってしばらくおしゃべりして……と繰り返します。

 もちろん速さなど必要な情報は与えられていて、読んで計算すれば2人がいつどこにいるか分かります。そういう意味では数学の問題でしょう。でもぼくは読んだとき「何、これ……?」と思いました。問題文が長く、数学とは関係のない余分な情報が多い。これはやめた方がいいと思います。受験生はそれぞれいろんな背景があって、とにかく「数列の問題を解こう!」と考えて会場に来て試験に臨んでいるのです(選択問題なので)。決まった時間に問題を解かなければならず、つまらない情報の解釈に1秒だって余計に時間を取られたくないでしょう。何しろ、一生がかかっている試験です。大手予備校の先生も、今回の試験について難易度は高いと言っているみたいではありませんか。自転車のよくわからない状況の判断などに煩わされず、どんどん解き進めたいところでしょう。それなのになぜか、わざわざ自転車…………。どうしてもこういう風に、何か日常生活に結びつけなければいけないんですか? そういう方針で作ることになっているのだ、とどこかで見た気もします。すると今時の流行りなんでしょうか。時間がたっぷりあって、落ち着いて取り組める状況ならそれでも構わないのです。しかし、今は違うんですよ。わざわざ長文にせず、「点Pと点Qが~~」という問題にすればよいことでした。

 大学に進んで、数学や物理、工学などを勉強するのに必要な知識や技術があるか判断するのが入学試験の目的です。受験生は数列のいろんな問題を練習してきたでしょう。それが数学の知識、技術なのです。大学のテキストを読むときには高校で勉強してきたあれこれが常に役立ちます。ぼくは最近大学1,2年でやる数学や物理の復習をしていて、そういうことを感じます。自転車の解釈でなく、数学の知識と技術が役に立つのです。

 

 少し書きましたが、日常生活の何かを取り入れるのがよいとか、流行りなのかも知りません。でもぼくはこれに「生徒の対話が大事」、「アクティブラーニングは素晴らしい」などと同じ臭いを感じます。「それがよいことなのだ」ということになっていて、流行りに遅れるなとばかりにみんなで一斉にやっている。そしてお互いに褒め合う。

 

 この問題のおかげで必要な点に届かず、何点かの差で大学を落ちる人だっているかも知れません。気の毒としか言いようがありません。