マジック、ミステリー、ギャンブル、……などについて様々な切り口で楽しく語ります。目次は次の通りです。
・奇術とミステリのあいだ
・トリック世界のディプロマシー(権謀術数)
・表が出たらぼくの勝ち、裏が出たらきみの負け
・トリック・ランドのエジソンたち
・ミステリのたくらみ
この目次だけでは内容は伝わりにくいですが、マジックとミステリーの関係、落語など古い話とトリック、ギャンブルとマジック、トリックの世界で才能を発揮した人々、『11枚のとらんぷ』(泡坂妻夫)紹介、推理小説家ディクスン・カー解説、……といったことがテーマです。ぼくはマジックも大好きなので大変楽しめました。古い本ですが手に入ります。 著者の松田氏はマジック研究家であり、マジック関係の著書がたくさんあります。ぼくもずいぶん持っていて勉強、練習しました。松田氏はどんな本もたくさんの資料に基づいて正確に書く、という印象です。
推理小説家ディクスン・カーについて最後の部分で40ページに渡って「Cの悲劇」として書いてます。カーのファンと、そうでもない人の対談です。ぼくは『ユダの窓』などいくつかタイトルを知っているくらい。読んだことはありません。しかしカーの推理小説を中心に、その頃のミステリーを興味深く解説しており、大変面白いです。膨大な時間を費やさないとこれだけのものは書けないのではないかと思います。
この本の中で『11枚のとらんぷ』(泡坂妻夫)が紹介されています。
『11枚のとらんぷ』は3部から成ります。第1部では素人奇術団体マジキ・クラブの発表会で出演者が消え、アパートの自室で殺されているのが見つかります。第2部「11枚のとらんぷ」はこの本と同じタイトルの短編集です。11種類のマジックがショート・ショートの形で短編になっています。どれもメンタルマジック(超能力を装った、例えばテレパシーなどがテーマのマジック)を扱っています。第3部で犯人が明らかになります。『トリックものがたり』ではさらに詳しく説明していて(もちろんネタバレなし)、ぼくはとにかく面白そうだと思ってすぐ手に入れて読みました。本の構成を始め、すべてがもの珍しかったですし「おお、こうきたか」という感じで、面白かったです。
きちんとした著者が面白い本を紹介する。読者は今まで読んだことのなかったいろいろな本に触れることになります。読書の楽しみのひとつです。