いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

『知の越境法~「質問力」を磨く~』紹介

 仕事の帰り道、大抵本屋さんに寄ります。新書の棚を「新しいのは出ていないかな……」と眺めます。『知の越境法~「質問力」を磨く~』(池上彰2018光文社新書)を買いました。 

知の越境法~「質問力」を磨く~ (光文社新書)
 

池上さん、いろんなことを知っています。よくあれだけの知識を……と思いますが、どうやって勉強してきたのか、そんなことが書いてあります。彼は近い内容の本をいくつか書いていますが、一番新しいのを読めばいいでしょう。それまでの自分の知識が通用しないような仕事でも嫌がらず、先を見て敢えて選ぶ。そういうことの繰り返しだったようです。
 MIT(マサチューセッツ工科大学。超一流の工科大学です)を始め、米国では「リベラルアーツ教育」が実践されているそうです。教育の制度も大分違う日本と単純に比較してもあまり意味はないかも知れませんが、MITは「最先端のことは教えない」のだそうです。「今最先端のことは4年で陳腐化する。新しいものを作り出す、その根っこの力をつけるのがリベラルアーツ。すぐに役立つものはすぐに役立たなくなる」と先生方が言うそうです(リベラルアーツ:起源はギリシャ、ローマ時代。文法、修辞学、論理学、算術、天文学幾何学、音楽)。MITでは音楽教育が充実していて、ピアノのある音楽教室がずらっとならんでいるそうです。そのまま「だから音楽を!!」とか言っても仕方ありません、本質を捉えればよろしい。
 生徒はすぐに「数学は使わない」、「××は受験に出ないから」、……とか言います。生徒だけではない、教員も悪いのですね。「就職に××が必要だから」、「××大学の受験に○○が必要だから」、……口を開けばこの調子です。そんな、足下をギリギリまで削ぐような勉強の仕方を教えてどうするんだ、と言いたいです。高校生はまだほとんど何も勉強していません。××は不要、なんてあるはずがない。全部勉強すればいいでしょう。「小論文を書くには技術があればよい。知識の問題ではない」なんて教員が言うのを聞いたことがあります。いや、本くらい読んでおきなさいよ……。知識ギリギリのところで書く文章など面白いはずがないでしょう。「この機会に本を読んでおきなさい」くらい言えばいいのに……。ぼくはとにかく読書を勧めていきたいと思います。