いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

『知っていそうで知らないノーベル賞の話』紹介

 久しぶりに「これだよ、これ!」と思った本です。

知っていそうで知らないノーベル賞の話 (平凡社新書)

 ぼくたちは簡単に「ノーベル賞」と言います。でもよく考えてみるとノーベル賞についてほとんど何も知らないことに気づきます。せいぜい「ダイナマイトの発明者、ノーベルがその遺産で作った賞」くらいでしょう。目次は次の通りです。

序章 ノベールか、ノーベルか
第1章 スタートまでの困難な道のり
第2章 ノーベルはいかにして巨富を築いたか
第3章 経済学賞はノーベル賞ではない
第4章 候補者推薦から受賞にいたるまで
第5章 ノーベル賞事件簿
第6章 お金をめぐる話
第7章 ノーベル賞と日本人

 例えばノーベル賞創設についての話。ノーベルは遺書で親族に遺産の5%しか残さず、ほとんどをノーベル賞基金としたのですが、その遺書も2回書き換えたのものであり、親族は「遺産がもらえないなんてひどい!」ということでしょう、かなり抵抗したのだそうです。最初の遺書では親族の相続分もそれなりにあったし、文句を言いたくなる気持ちも分かります。当時このレベルで国際的(どの国にも平等!)な賞はなく、賞を与える団体もノーベルが何の打診もナシにいきなり遺書で指定したとか、興味深い話がたくさん。まだ半分くらいしか読んでいませんが、楽しめそうです。ノーベル物理学賞などもありますし、知っている物理学者が受賞しているノーベル賞でも、今までは「おお、ノーベル賞か、すごいな」くらいでしたが、候補者を決めたり、受賞までにはいろいろたいへんみたいです。

 こんな感じに、何かを別の角度から見せてくれる、大げさな言い方をするとものの見方が変わってしまうような体験ができる。本を読んでいて「面白いなあ」と感じる瞬間です。しかもこの情報量でたったの¥700。もちろん個人差は大きいですが、高校生はあまり本を読んでいない印象です。数学の本、物理の本も大事ですが、こんなのも読んで欲しいと思います。

 新年度が始まり、生徒に「是非本をたくさん読んでください」と話しました。学校で教わる勉強は大切です。しかし本を読めば視野がずっと広がります。世の中にある面白い話に気づくことができますし、新しい視点を得ることもできます。

 ……という理屈はまあよいです。とにかく面白い!! 安いし、面白いし、本を読まないというのはもったいないのです。