「Y駅発深夜バス」(青木知己2023創元推理文庫)を紹介しましょう。推理小説の短編集です。まだタイトルの話、「Y駅発深夜バス」しか読んでいないのですが、すごく面白かったのでレビュー。
短編ですが第1部、第2部に分かれています。仕事で飲み、帰りが遅くなった坂本が深夜バスで家に帰ります。途中、パーキングエリアで不思議で不気味な場面に出会います。帰って妻に話すと、そんな時間のバスはないはずだ、と言われます。酔っていたし、勘違いしたようです。ここまでで第1部。第2部では殺人事件が起こり、訳知りの男が登場し、何の関係もないはずのバスが問題になります。第1部の謎がきれいに解決します。
第1部は不気味です。怪談で、エレベータに乗るとないはずの地下2階のボタンがあったり、最終列車が終わっているはずなのに走っている列車とか、そんなのがありますよね。しかも坂本がパーキングエリアで見た光景はそこだけ暗い建物の中でなぜか何人もの人が窓際に並んでいる……というもの。怖いですし、「こんなの、いったいどうやって結論までたどり着くの……?」と思いました。
トリックのためのトリックという感じではなく、きちんとした理屈があり、読んでよかった……と思いました。全部で5話、入っています。残り4話、楽しみです。