いぬおさんのおもしろ数学実験室

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『新数学対話<1>行列式』紹介

 大学の授業で線形代数が始まるとすぐ、行列式の一般的な定義が出てきます。場合によっては2次の正方行列なら高校で触れているかも知れません。

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このとき、Aの行列式とは|A|=ad-bc なのでした。a,b,c,d を係数に持つ連立方程式を解くとき、この値が0かどうかで扱いが変わります。3次の行列なら

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のようなものですが、これの行列式は高校では出てきません。大学で勉強する線形代数ではこういう行列に対しても行列式を考えるのです。

 そこでは高校では出てこない「置換」というものが使われていて、ある程度勉強した後なら当たり前の式なのですが、初めてでは厳しいでしょう……。置換のちゃんとした定義はもう少し先、群論で出てきます。行列式に戸惑った人も少なくないと思います。ぼくはそうでした。今回は、友人が「何でもっと早くこの本を教えてくれなかった?」と文句を言った本を紹介しましょう。『新数学対話〈1〉行列式』 (石谷茂1980現代数学社)です。少々古い本ですがamazonなどで手に入ります。行列式とは何か、どうしてこんな定義をするのか、発見的で大変分かりやすい納得のいく説明をしています。他、行列式の余因子展開、行列のランク、区分行列の行列式など、行列式に関係のある話をひと通り載せてあります。この本では行列のランクは行列式で定義してあります(ランクの定義は大きく分けて3通り。そのうちのひとつ)。参考までに、この本の行列式はこういう定義です。

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εは本の中で「順列の符号関数」として定義されていて、詳しく分かりやすく説明されています。

 『新数学対話〈2〉行列』 (石谷茂1980現代数学社)もよかったです。こちらではランクは行列の標準形を用いた定義をしています。やはり大変分かりやすい説明です。

 最近は特に大学の1,2年くらいの内容については分かりやすい本がたくさん出ています。一概にそれがよいことと言っていいかどうかは分かりませんが、勉強しやすい環境になったことは確かだと思います。