以前勤めていた学校でぼくが芸術鑑賞会の担当になり、三国志の人形劇を選んだことがありました。中国の古典、日本でも人気の物語ですよね。せっかくだからいいものを……と考え、業者の人が来たら時間の許す限り話を聞いて(演劇をやることは決まっていた。いろんな劇団の人たちが宣伝に来ました)、『君に志はあるか』という案内も3回に渡って発行したり、生徒の希望者を募って図書館に集め、国語の先生に『三国志の夜』みたいな話をしてもらったりしました。
ところが当日、3年生の2クラスから欠席者が50人くらい出てしまいました。これはもはや風邪をひいたとかの偶然ではありません。推測するしかないけれど、例えば担任が「いいか、出席しなきゃダメだぞ。ただし明日たまたま風邪でもひくことがあるかも知れないが……(ここでニヤッと笑う)」とでも言えば生徒は「ああ、休んでもいいんだ」と思うことでしょう。ぼくは翌日の職員の朝会で「こんなことでは芸術鑑賞会の意味がなくなる、担任はきちんと指導してくれなくては困ります!!」と3年の学年団の方を向いて怒鳴りました。誰も言い訳しませんでした。認めたんだろうと解釈しています。
本当にくだらないです。三国志を見ている暇があったら勉強したい、ってことでしょうか。でも芸術鑑賞会に1回行って落ちると言うなら端(はな)っから落ちています。頑張るタイミングが違っていると思います。受験って、もっともっと早くから準備しておくものでしょう。それをやっていないからつまらないことを思いつくのでは? 今にして思えば、係として学年に正式に抗議して、欠席の多かったクラスは体育館にでも呼び出して集会でもした方がよかったかも知れません。
生徒も教員も情けない。受験指導のなれの果てか。狭い視野で受験、受験と大騒ぎしてせっかく古典を勉強する機会を失って、それで何ともないのです。ぼくは自分の勉強をちゃんとやっておこう、と思いました……。