何年か前、学校の数学科の研修に行ってきました。あちこちの学校の数学の先生たちが「うちの学校ではこんなことをやっている」というのをレポートに書き、発表しあう、みたいな会です。若い先生が多く、最近の流行で「アクティブラーニング」「ジグソー法(アクティブラーニングの一種らしい)」といった発表が目立ちました(と言うか、そればっかり)。授業のやり方のひとつなんですが、具体的に書いてみましょう。適当ですが、例えば「2次関数のグラフを原点に関して対称移動したグラフの式を求めよ」という問題を生徒に考えさせます。ここで生徒を3グループに分けます。Aグループには平面上の点を原点に関して対称移動した点を求める方法を教えておきます。Bグループには2次関数のグラフの頂点を求める方法を教えておきます。Cグループには2次関数の2乗の係数の正負とグラフの下に凸、上に凸の関係を教えておきます。各班から数名ずつ代表を出します。代表はそれぞれの分野の「エキスパート」と呼ばれます。エキスパートが力を合わせれば問題が解けます。問題を解くために必要な知識が揃うからです。おおっ、素晴らしい!!………しかしこんな子供だましみたいなことをやってて教員も生徒も面白いんですか? これでは当たり前の事実をもったいぶって教えてるだけ。念のため、英語の人ですがアクティブラーニングを勉強している先生に「ぼくの『アクティブラーニングとはこういうもの』という認識に間違いはありませんか?」と確認もしました。
実際には、まあもっとちゃんとしているんでしょう。でもそんなことはもうどうでもいいです。とにかくビックリしました。若い先生たちが流行に乗って、こんなことに時間を使っている。ぼくが生徒だったら、「そんなことをモタモタやってないで早くもっと面白いことを教えてくれ!」と言いたくなりますし、「この証明は実はこういう点でごまかしがある。こういう理由で仕方のないことだけれど、大学では××……」「この定理は物理でこのように使われている」「この定理は見かけは単純だけれど、こういう深い意味がある」「ニュートンはきつい性格で皆に恐れられていて、彼が会議中暑くて『ちょっと窓を……』と言いかけたら場内が凍りついた」………といった話をたくさん聞きたいと思うでしょう。そして、そういう話は生徒同士が100時間、話し合いをしたって出てはきません。教えられるのは教員だけ。こんな基本的で当たり前のことすら忘れ果て、一体何をどうしようというのでしょうか。
アクティブラーニング、何かいいことがあるのかも知れません。実際、さっきの英語の先生によると「英語では特定の部分に対し役立つ」とのことでした。でも、どっちにしたってそんなことばかりやっていたら教員自身、勉強の時間なんかなくなるし、ニュートンの話など読む暇もなくなるでしょう。いつまで続くか、アクティブラーニング狂騒曲。
ディープラーニングというのもあります。名前は似てるけどこちらは本物。画像認識などに欠かせない技術のひとつです。