古代ギリシャの「3大作図問題」というのがあります。それぞれを簡単に説明してみます。どれも使える道具は定規とコンパスだけです。
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①任意に与えられた円と同じ面積の正方形を作図せよ(円積問題)
半径1の円の面積は
です。これと同じ面積の正方形は、1辺が√πですね。他の問題でも同様ですが、長さが1の線分は与えられているとします。これと定規、コンパスで√πの長さの線分を作図できなければなりません。しかしこれは不可能なのです。それが証明されたのは3つの問題の中で最後、1882年でした。πは超越数である(πは有理数が係数のn次方程式の解にならない)という事実を示さねばならず、それが大変だったのです。
②任意に与えられた立方体の体積の二倍の体積を持つ立方体を作図せよ(立方体倍積問題)
ギリシャで疫病が発生し、「立方体の祭壇の体積を2倍にせよ、そうすれば疫病は収まるであろう」という神託があったそうです。人々は最初1辺を2倍にしたそうですが疫病は止みません。再び神様にお伺いを立てたら「それでは体積は8倍になってしまう」という次の神託があったとか。実は1辺を元の1.25992105……(=2の3乗根。3乗して2になる数です)倍にすればよいのですが、実はこの長さは定規とコンパスでは作図できません。きちんと証明できたのは1837年です。疫病はデロス島での話なので、デロスの問題とも呼ばれます。
③任意に与えられた角を三等分せよ(角の3等分問題)
これも1837年に否定的に解決されました。つまり「不可能」と証明されたのです。60°の角は3等分できないことが証明できます。つまり20°の角は作図できないのです。証明の難しさは②の立方体倍積問題と同じくらいです。なぜか3等分問題の好きな人は多いのです。身近にいたので「もう不可能であることが証明されているんだから意味ないよ」と注意しました。そうしたら「多分3等分に近い、近似作図法です」とのこと。確かにそういう道はあります。世の中の3等分家(3等分が好きな人たちはこう呼ばれるそうです)たちが「3等分できた!」というのは近似作図法であることも多いみたいです。
代数学の「体の拡大」あたりまで勉強すれば立方体倍積問題、角の三等分問題なら不可能であることがすぐ示せます。近々このブログで角の三等分問題について書きたいと思っています。