いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

2円の交点を通る直線を求めるときの注意

  次の2つの円の2交点を通る直線を求めましょう。

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単純に引き算して整理すればx+y=2となりますので、これが答えの候補です。どうしてこんな方法が成立するのか。

①、②の交点を(p,q)とします。すると次が成立します。

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さっきと同じ計算でp+q=2を得ますが、これは点(p,q)が直線x+y=2の上にあることを示しています。

 しかし、これで終わらせてはいけないのでした。実際、この問題に答えはありません。②は平方完成すると

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で、2つの円の中心間の距離は 3√2 なので、この2つの円は交点を持ちません。従って交点を通る直線も存在しないのです。

 教科書ではあまり強調していませんが、ぼくは十分に念押しします。

2つの円の交点を通る直線は、あるとすれば x+y=2 に限ります。あるとすれば、です。円が交わってない場合、直線もありません。でも、仮に交点があって直線が存在するならそれは x+y=2 に限る、ということです」くらいに。だから最初に「候補」という言葉を使ったのです。

 数学ではこういうことがたくさんあります。「この方程式が解を持つとするとその解は××に限る。だが実際にあるかどうかは別問題」のような議論は(生徒はあまり意識していなさそうですが)多いのです。いわゆる「解の吟味」というのが必要になる問題があります。場合分けなどしたとき、出てきた解が最初の仮定を満たしているかチェックする、あれなどです。チェックではじかれたらそれは答えにはなりません。「このケースでは、仮に解があるとすれば××に限る。しかし、この××は最初の仮定を満たしていない」などとなるわけです。数学の議論では「pならばq」がたくさん出てきます。このとき、p⇔q(qはpの必要十分条件)でないなら本来の解でないものが混ざります。生徒に念押しのために見せる例としては

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などがあります。これは、最初のステップが同値な式変形でないのですね。だからその瞬間に余分な解が混ざるのです。

 なんでこんな余計なものが混ざるんだろう、とぼくも高校生の頃、疑問に思っていました。ヘンな話だな、というより面白いと感じます。