いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

『1回しか言わないからよく聞け!』について

 余弦定理の授業です。余弦定理とは、3角形ABCに対して成立する定理で、次のようなものでした。

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なお、∠Aの対辺をaなどとおいています。もちろん証明もしますが、ぼくはまずこの式を憶えさせます。本当に文字通りにこれを憶えても意味はありません。実際の三角形で辺や角を指さしながら、場所で憶えるように言います。そのとき「1回しか説明しないのでよく聞いてください。いいですか、1回しか言いませんよ。1回ですよ」と十分に念押ししてから、「これの2乗はこれの2乗プラスこれの2乗マイナス…………」と指をさし始めます。初めてだとこれだけでは憶えられっこありません。実際には10回もやると大体頭に入るみたいです。

 ぼくはふざけてやっているわけです。続けて「教員が時々言ってますよね。『1回しか言わないからよく聞け』。あれ、何なんだろうね?」と話します。生徒は「ある、ある」みたいな感じでニヤニヤします。そう言えば、コミックス『ガラスの仮面』では元女優の月影先生が弟子の主人公、北島マヤにそう言ってました! 

ガラスの仮面 1

ガラスの仮面 1

 

こういう、天才が天才を育てるみたいな場面なら分かるのです。しかしですね……。

 フツーの教員が生徒に何を偉そうに言ってるんでしょうか……。「偉そうには言ってない」かな。あるいは口は達者ですから「集中させるためだ」とか言うのかも知れません。ちなみにぼくは1回聞いただけでは理解できないことだって多く、しつこく聞くタイプ。「1回しか言わないぞ」と言っているご自身はどうだったんですかね……。ま、こんなことはどっちだっていいのです。今更ですが、実際に好意で言っている人もいるのかも知れないし……。

 立派な先生、人格者はいらっしゃいますが、そうでない人もいます。威張ったり怒鳴り散らしたり。つまらない争いも見かけますし、意味不明のこだわり、……本当にくだらないです。ある先生(人格者!)は「『ひょっとして自分が間違っているのかも』と思えばイライラしなくなる」と話していました。なるほど、と思いましたがなかなかそうはなれません。それでも、ぼくも教員生活は結構長いのでさすがに最近は周りを見る余裕が出てきました。なるべくつまらないことには関わらないようにして自分は自分の勉強をしたいと思います。

 そろそろ2学期最後の授業です。つまらない争いをしている人たちを尻目に、最後はこれをやろうかな……と今、考えています。↓ 

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パソコンとスピーカーを持ちこんで、コナン君の蝶ネクタイ型変声機の実験をするのです。理系というのは授業で理科や数学をたくさん勉強していることではありません。そんなの、ただの表面的な事実に過ぎません。いろんな現象の起こる仕組みを知りたい、数学や物理がどうやってそういう現象に関わっているのか知りたい、……それが理系です。考え中ですが、実験をするならそういう話もするつもりです。