いぬおさんのおもしろ数学実験室

おいしい紅茶でも飲みながら数学、物理、工学、プログラミング、そして読書を楽しみましょう

10円玉の周りで10円玉を回す

試したしたこと、あるでしょう。10円玉を2枚ピッタリくっつけて並べます。2枚を10円玉1、10円玉2とします。

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10円玉1の周りを縁(ふち)が滑らないように10円玉2を回すと、10円玉2は元の位置に戻るまでに2回、自転します。2つの10円玉の円周は当然等しいですから、頭の中だけで考えると1回転のように思えます。しかし2回転なのです。実験してみます。2を、1の周りを回してみましょう。すると……おお、確かに2は1の周りを180°動いただけなのになぜか1回転しているではないですか!?

「2は1の周りを回る(公転)。さらに自分自身の中心の周りに回る(自転)からこれで2回転」といった答えを聞いたりします……。いいのか、それで!? ……というわけできちんと証明してみましょう。

10円玉2が10円玉1の上に並んでいる状態から考えます。図は、その上下に並んだ状態(2点A,Bが一致している状態)から、接点がCになるまで10円玉2を回したところです。滑らずに回すので弧AC=弧BCです。従って∠AOC=∠BO’C。この角をθとおきましょう。いつもAO∥O’DとなるようにDを取ることにすれば、∠AOC=∠DO’Cです(錯角は等しい)。

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最初はO’BとO’Dは一致していたはずで、そこから結局2θだけ自転したことになります。つまり、円O’は円Oの周りをθだけ回ると、2θだけ自転するのです!

ぼくはこの話を高校のとき、矢野健太郎先生(故人。微分幾何学者)のエッセイで読みました。10円玉を回すのはよくやっていて、事実は知っていましたが「どうしてだろう?」とずっと思っていました。証明を読んで「おお、なるほど!!」と感心したのを覚えています。